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たけのこの科学
作業時間:?日
■ はじめに ■
- 春の季語にもなっている「たけのこ(竹の子、筍、英名bamboo shoot)」は、イネ科タケ亜科タケの若芽をさし、日本や中国で野菜として利用されています。しかし、食べるためにはアク抜きをしなければなりません。いったい「アク(灰汁)」ってなんだろうってことで、今回のテーマは「たけのこ」です。
→「アク」については下の「参考」の項目に記載しました。
- さて、ここで実験・検証するのは、「アク抜きをしたものとそうでないものでは、味はどのように異なるのか?」ということです。
■ 用意するもの ■
- 採取後3時間以内のたけのこ(A)、採取後3日放置したたけのこ(B)。
名称 |
採取後経過時間 |
処理 |
たけのこ |
「未処理3h」 |
3時間以内 |
水だけ |
たけのこA |
「処理3h」 |
3時間以内 |
重曹 |
「未処理3d」 |
3日程度 |
水だけ |
たけのこB |
「処理3d」 |
3日程度 |
重曹 |
▼とりあえず左を「たけのこA」、右を「たけのこB」として使用します。
- スーパーなどで市販の重曹(↓)、調理器具
■ 方法 ■
- たけのこ(A)を真っ二つに切ります。「こうしたらアクが抜けやすくなって実験になんないじゃん!?」って思うかもしれませんが、アクがどれだけ抜けたがではなく、「アク抜き処理と未処理には差があるのか?」ということなのでよしとしましょう。
- 手っ取り早く圧力鍋を使います。一方は水だけで煮る「未処理3h」。もう一方は重曹で煮る「処理3h」。どちらも溶液が異なるだけで、加圧時間は10分、火を止めてから放置する時間が10分です。
- 上が重曹と煮た「処理3h」、下は水だけの「未処理3h」。茹であがった二つを並べましたが表面の色、つやはあまり変わりありません。
- 内側の色は、まったく異なります。おでんに例えるなら、処理3hはダシがよく染みてるだろうなぁって感じです!
- 上記と同様に、採取して3日程度経過したたけのこも「処理」と「未処理」のものを作ります。
■ 結果 ■
■ コメント ■
- たけのこは一気に出てきますね。この写真は、栃木県那須塩原市の5月5日のものですが、ここに何個たけのこが出ているか分かりますか?(答えは写真をクリック!)
■ 参考 ■
- アクとは、食品に含まれる、渋み・苦み・不快な臭いなどのもととなる食事には不要な成分の総称。といっても明確な定義はないようです。たけのこの場合、アクとは、シュウ酸やホモゲンチジン酸とその配糖体などが主成分とされています。たけのこを湯がき、縦に切ってみると白い粉末が観察されます。これはアミノ酸の一種である「チロシン」です。たけのこはチロシンを非常に多く(100g中690mg:日本食品成分表)含み、これが「酵素」によって次第に変化しホモゲンチジン酸になります。したがって、掘り出したら速やかに加熱して酵素を失活させる、「アク止め」が必要となります。
- 「湯がく」とは、たけのこに、米ぬか、米のとぎ汁、あるいは重曹などのアルカリを加えて煮ることで、「アク止め」と「アク抜き」を同時に行うことができます。ただし、科学的に証明はされていないようで、アク止めはできても、アクそのものを取り除くことは不可能との意見もあります。まあ、基本的にシュウ酸やホモゲンチジン酸等は水溶性なので、煮ることによって少なからずアク抜きはできると思いますが。
- 「唐辛子などを一緒に混ぜて煮ると良い」とも言われますが、これも科学的根拠に基づくものではないらしく、えぐみを辛さなどでまぎらわせるような体感的な効果のようです。
- 栄養価 食品成分 文部科学省「五訂増補日本食品標準成分表」より引用 可食部100g当たり たけのこ 若茎ゆで(竹皮及び基部を除いたもの)
エネルギー30kcal |
水分89.9g |
蛋白質3.5g |
脂質0.2g |
炭水化物5.5g |
灰分0.9g |
カルシウム17mg |
リン60mg |
鉄0.4mg |
ナトリウム1mg |
カリウム470mg |
マグネシウム11mg |
亜鉛1.2mg |
銅0.13mg |
βカロテン当量12μg |
ビタミンB1 0.04mg |
ビタミンB2 0.09mg |
ナイアシン0.6mg |
ビタミンC 8mg |
食物繊維3.3g |
- シュウ酸について
無味無臭の柱状に結晶した有機酸で、たけのこやほうれん草などに多く含まれます。シュウ酸が尿中に増えすぎると、カルシウムと結合して「シュウ酸カルシウム結石」ができます。尿路結石の多くはこのシュウ酸カルシウム結石で、働き盛りの男性に多く発症しますが、、ほうれん草に含まれるシュウ酸による骨粗鬆症などの影響が現れるのは、既に結石がある方を除いて、生で1kg以上食べ続けた場合に起こると言われています。適度な量で、茹でて食べれば問題ありません。シュウ酸はほうれん草のあくの成分で水溶性ですので、茹でることにより70~80%程度減らすことができます。ただ、素材はえぐみやクセなどの個性があるからおいしいということもありますが。
表1.食品中の蓚酸含有量(可食部100g中のg量)
食品名 |
測定部位 |
可溶性蓚酸 |
アカザ |
葉 |
1.690 |
ツルナ |
葉 |
1.277 |
煎茶* |
乾葉 |
1.044 |
タケノコ |
茎 |
0.654 |
ホウレン草 |
葉茎 |
0.650 |
浜防風 |
葉茎 |
0.585 |
不断草 |
葉茎 |
0.580 |
生姜 |
根 |
0.574 |
茗荷 |
花茎 |
0.447 |
イタドリ |
茎 |
0.433 |
茗荷茸 |
葉茎 |
0.360 |
蒟蒻芋 |
根 |
0.175 |
ヤツガシラ |
根茎 |
0.175 |
里芋 |
根茎 |
0.151 |
筍水煮 |
茎 |
0.138 |
アカメイモ |
根茎 |
0.125 |
生茶葉 |
葉 |
0.121 |
芹 |
葉茎 |
0.120 |
薩摩芋 |
根 |
0.103 |
三つ葉 |
葉茎(夏) |
0.080 |
ヨモギ |
葉 |
0.063 |
榎茸 |
全菜 |
0.061 |
大和芋 |
根 |
0.049 |
ナメコ |
全菜 |
0.043 |
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