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貴金属のはなし
■ はじめに ■
- なぜ人類が金や銀などに惹かれるのか?
- 古くから人類はさまざまな意味を含めながら貴金属を保有してきました。江戸時代の小判にみられるように通貨としての価値もありました。もちろん現在は通貨としての価値は薄れましたが、紙幣などの価値もインフレ・デフレによって変わることから現在でも金などは資産としての価値を持っています。特に近年は原油を筆頭に素材インフレによって貴金属のほとんどが高騰しています。ここ2,3年で2倍に跳ね上がったものもすくなくありません。
- その価値は単なる需要と供給だけの問題ではありませんので判断するのは容易ではありませんが、貴金属のことについてよく知っていると理解や納得できる所もあるし、また、面白いかも知れません。そんなことを踏まえて「貴金属のはなし」をまとめました。
- 以前、ある人が二人に金のオブジェとプラチナのオブジェをプレゼントしました。プラチナのオブジェをもらった人が、「金の方がいい!」と怒っていました。スポーツ界では金が一番だという理由でしたが、希少価値を考えると当然プラチナの方が上なんですね。ちなみに融点もプラチナの方が高いので、金は1000℃くらいで溶けてしまいますが、プラチナは1700℃くらいまで耐えられます。
■ 貴金属とは? ■
- 貴金属(Precious metal)とは、
- 金
- 銀
- 白金(プラチナ)
- パラジウム
- ロジウム
- イリジウム
- ルテニウム
- オスミウム
の8種類を指す。(ここに銅なども含めることもある。)
- 一般的に存在が希少なものが多い。耐腐食性があり、非常に硬く、融点も高い。
- 白金類(オスミウム、イリジウム、白金),パラジウム類(ルテニウム、ロジウム、パラジウム)などの白金属元素は、銀白色を呈した美しい金属で、酸、アルカリなどに侵されにくく、密度が非常に高い。
- 金、銀、プラチナ、パラジウムの中で、現在市場で取引されている価格から同じ1g相当で価格を比較すると、およそ最も高価なものがプラチナで、金はその半分、さらにパラジウムは金の半分、銀はそれよりも低い。当然ながら価格は日々変動している。
■ 金 Gold(Au) ■
- 英語名のgoldの語源は、古代ドイツ語であるゲルマン語のgulth「黄色/キラキラ輝く」に由来する。元素記号のAuは、ラテン語の「aurum」で、ヘプライ語の「光」または「赤」を意味する「aus」に由来するといわれている。オーロラauroraの「aus」も同じ語源である。
- 一説には紀元前4500年から、貴重な金属として扱われており、おそらく人類が装飾用として用いた初めての金属である。古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られる。
- これまで掘り出された量は15,5000トン、地球上に存在する金の75%が掘り出されていると言われている。
- 中世ヨーロッパでは、水銀など他の物質から金を作り出す錬金術が盛んに行われた。具体的には水銀などに触媒が加わって金などの貴金属を作ろうという試みで、この触媒を「賢者の石」と呼んだ。これらが科学的に不可能なことであるのは周知の事実だが、錬金術の研究が現在の化学の発達に寄与したことも間違いない事実である。
- 金は最も価値のある金属と考えられてきたため、通貨制度において、その基準(金本位制)とされてきた。また純粋、価値、特権階級、価値ある物の象徴としてもとらえられてきた。
- 金は単体では柔らかすぎることや、地球上の存在量が限られていることなどから、金貨として利用する場合は銀や銅などの他の金属と混ぜて利用されるのが一般的である。
現在は通貨単位としての価値は薄れているが、世界各国の中央銀行でも準備金として金を保有している。アメリカ合衆国連邦準備制度理事会(FRB)の12地区の連邦準備銀行が、世界で最大の保有量を有する。保有する貴金属としては金のみ。
- 金の取引にはトロイオンス、やグラムの単位が用いられる。正確には1トロイオンスは、31.103 4768gである。他の金属との合金の場合は、金の含有量をカラットで表す。金の価格は公開された市場取引に関連して決められる。
- 地球に存在する金のうちすでに掘り出された量は15.5万tでオリンピックプールにすると約3杯分、世界の埋蔵量はあと9万tと言われている。
- 金の産出国ランキング(2004)
- 南アフリカ共和国(14.1%)
- オーストラリア(10.7%)
- アメリカ合衆国(10.6%)
- 中華人民共和国(8.8%)
- ペルー(7.1%)
- ロシア(7.0%)
- カナダ(5.3%)
- ウズベキスタン(3.8%)
- インドネシア(3.8%)
- パプアニューギニア(3.0%)
■ 銀 Silver(Ag) ■
- ラテン語argentum(輝くもの)に由来する。なお、アルゼンチンの国名も銀のラテン語名argentumに由来する。スペインが侵攻した際に、銀が採れると思い、現地の川をスペイン語で「銀の川」を意味するラ・プラタ川(rio
de la plata)と呼んだことから国名に波及した。しかし、実際には銀はほとんど採れなかったようである。
- 英語Silverは、ゲルマン語派のゴート語Silubrの「白く輝く」に由来する。
- 銀は古くから宝飾品に使用されるとともに、通貨として使用され、金とほぼ同じ役割を担ってた。紀元前には金よりも重宝されていたこともあった。一説には紀元前4000年前から扱われていたとも言われている。
- 新大陸発見後は、ペルーなどで大量採掘された銀が世界中に流れることになった。
- 電気および熱伝導率また可視光線の反射率は、いずれも金属中で最大で、また、光の反射率が極めて高いことから日本語では「しろがね」と呼ばれた。貴金属の中では比較的化学変化しやすく、硫黄分が含まれていると表面に硫化銀ができ、黒ずんでくる。(温泉などに注意)
- 銀イオンはバクテリアなどに対して極めて強力な殺菌力を示すため、現在では広く抗菌剤として使用されている。
- 中世では貴族・王族の間で銀食器が多く用いられてきたが、ヒ素などの毒などを盛られたとき、銀製品が化学変化をおこしやすいことを利用して毒の混入を調べる意味合いがあった。
- 占星術や錬金術などの神秘主義哲学では、銀は月と関連づけられ、銀は男性を、金は女性を意味していた。ある時を境に位置が逆転し、銀は月や女性原理などを象徴する物となり、一方、金は太陽や男性原理などを象徴するものとなった。
- これまで産出された銀は100万トンを上回るとも言われ、金の10倍近くになる。現在、純粋な銀鉱山からの産出は2割で、金,銅,亜鉛などの生産過程で副産物として産出されるものが8割を占める。
- 1980年前後にハント兄弟が銀の価格が金に比べて低いことに着目して買い占めたのをきっかけに、一時価格が上昇したが、一般家庭の銀製品などから銀が市場に大量放出され暴落した。その後、1996年に米国の投資家ウォーレン・バフェットが金を買い占め、価格上昇があった。現在、東京工業品取引所では金,銀,プラチナ,パラジウムなどの貴金属が投資商品として取引されている。
■ プラチナ Platinum(Pt) ■
- 古代エジプト第18王朝時代にファラオの装身具として僅かながら利用されていたらしい。現存する最古のプラチナ製品は、エジプトのテーベにある女性神官シェペヌペットの墓から出土した「テーべの小箱」で、紀元前700年前後の頃のものと考えられている。
- 10世紀頃には、南米でも装身具として利用されていたが、スペイン人による南米への侵略の際に、当時ヨーロッパで珍重されていた銀と勘違いされて略奪され、持ち帰られた。しかし、銀と同じ加工設備ではプラチナを溶かすことができず大量に廃棄された。
- 1735年に、スペインの海軍将校がコロンビアのピント川河畔で銀に似た白い金属を発見し、本国に報告し、「ピント川の小さな銀(platina del
pinto)」が語源となり、プラチナの名前が付けられた。
- 1751年、正式に銀とは異なる元素であることが英国王室協会で発表された。また、当時のスペイン人が「oro(金) blanco(白)」と呼んだことから日本名では白金になったとの説がある。白金を直訳するとホワイトゴールドなってしまいそうだが、ホワイトゴールドとは金の合金のことなので、白金のことではない。
- プラチナは極めて高い触媒能力を持つため、燃料電池などにも使われ、近年エコロジーメタルとしての需要が増えている。
- これまでに人類によって産出されたプラチナの総量は約4000tで、金の35分の1に過ぎない。体積にして一辺が約6メートルの立方体程度である。
- プラチナ産出国ランキング(2004)
- 南アフリカ共和国(74.8%)
- ロシア(16.8%)
- カナダ(3.3%)
- ジンバブエ(2.1%)
- アメリカ合衆国(1.9%)
- コロンビア(0.7%)
■ パラジウム Palladium(Pd) ■
- 1803年にイギリスの物理学者のウォラストンによってプラチナの残留物から初めて分離され、当時話題となっていた小惑星パラス(pallas)にちなんで命名された。
- プラチナ同様、触媒作用を有し、白金系の金属の中では融点が低いことから加工性に優れ、価格の高騰するプラチナの代替品としての性質を併せ持ち、工業分野で広く利用されている。
- 需要としては日本(24%)とアメリカ(36%)が世界の半分以上を占めるが、供給のほとんどはロシア(66%)に依存している。
■ ロジウム Rhodium(Rh) ■
- 白金族元素の一つで貴金属にも分類される希少金属で、ウォラストンによって発見された。ウォラストンは白金鉱石を王水に溶かし、白金とパラジウムを分離した。そこに残ったものがロジウムであるが、塩の水溶液がバラ色だったためギリシャ語でバラ色を意味する"rodeos"から命名された。
- 排ガス制御の触媒として重要である。また、ロジウムメッキにも使われ、特に銀やプラチナ、ホワイトゴールドなどの銀白色の貴金属製装身具の着色、保護用に多用される。
■ イリジウム Iridium(Ir) ■
- 白金族元素で、レアメタル(希少金属)の一つであり、1804年にオスミウムとともにテナントが発見した。
- キログラム原器、メートル原器に使われる合金の材料である。
- 耐熱性に優れていることから、工業用のるつぼや自動車の点火プラグ、高級万年筆のペン先の材料として用いられている。
- イリジウムという名は、その化合物が虹の様に様々な色調を示すことからギリシャ神話の虹の女神イリスに因んで名付けられた。
- 主な生産地は南アフリカ共和国である。
- 白亜紀と第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層があり、これをK-T境界線と呼ぶ。隕石が地上の鉱物よりもイリジウムを多く含有していることから、K-T境界線ができ、恐竜の絶滅が巨大隕石によると考えられている。
- 携帯衛星通信として「イリジウム計画」という名称が付けられたことがある。これは地球の周りに人工衛星を配置し、衛星を経由して地球のどこからでも通信を可能にするというものであるが、このとき当初配置する衛星数を77個と計画し、地球の周りを77個の衛星が回る様子が、イリジウム元素の原子核の回りを77個の電子が回るのに似ていることにちなんで名付けられた。
■ ルテニウム Ruthenium(Ru) ■
- 白金族元素で、レアメタルの一つである。
- 1828年にベルセリウスとオサンが発見し、1844年にクラウスが単体分離に成功した。ラテン語でロシアを表わすRutheniaが語源である。
- オスミウムとの合金が、万年筆などのペン先に使われる。
- ルテニウムに関する技術を開発した野依良治教授が2001年のノーベル化学賞を受賞している。また、Grubbsらもルテニウムだけに関わらず多様な分野に与えた革新的な業績が評価され、2005年のノーベル化学賞を受賞した。
- 身近な所では、ハードディスクの容量増大の目的でも用いられている。
■ オスミウム Osmium(Os) ■
- 白金族元素で、レアメタルの一つである。
- 1804年、イギリスのテナントによって粗白金の王水溶解残留物から発見された。加熱すると生じる四酸化オスミウムが特有の匂いを放つことからギリシャ語osmeの「臭い」にちなんで命名された。
- 比重が極めて高く、地球のコアに近い方に多く存在すると考えられている。
- 白金やイリジウムとの合金は、耐食性に優れ、硬い。万年筆のペン先などに用いられる。
■ 話題 ■
- 最近“プラチナコロイド”と銘打った化粧品を耳にします。プラチナ関連ということで、ビナーレという雑誌(?)vol.14のK・Praisenからその解説を引用させて頂きました。ただし、真偽の程はわかりません。以下、引用文。
- 『肌トラブルのない肌の表面は、イオンバランスによって肌水分量を保っています。ところが紫外線やストレス、肌酸化などでイオンバランスが乱れると、水分を失ってシワやシミ、くすみやたるみの原因に。そこで注目されているのが、エイジングケアの切り札であるプラチナコロイド。プラチナを微粒子化したもので、肌表面にとどまっている限り力を発揮し続ける優れた成分。高い抗酸化力で老化の原因となる酸化から肌を守り、イオンバランスを瞬時に整えて水分保持力をアップ。シミ・シワ・たるみを徹底的にケアし、ふっくらとした潤い肌へと導きます。』
- プラモデル!?プラチナ製ガンダムの記事 ---> こちら
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