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理科実験の試み
生物教員である作者による理科実験の実践や試みの紹介
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はじめに
X線の発見
レントゲンの命名
レントゲンと特許
レントゲンの功績


レントゲンとX線は違うの?



■ はじめに ■
  • 最近、CMで「デジトゲン」というのを耳にします。レントゲン写真をデジタル画像化するものですが、この名前については個人的に寂しい気がします。もちろん理由はあります。そのためにはレントゲンの歴史を理解して欲しいので、レントゲンについて記述します。
  • レントゲンの歴史に関する読み物です。


■ X線の発見 ■
  • 1895年の11月、ドイツのマイン河畔の町にあるビュルツブルグ大学の総長兼物理学研究所長のウィルヘルム・コンラート・レントゲンは、多忙な中、ようやく腰を落ち着けて陰極線の実験を行う時間がとれた。
  • 陰極の再現実験をしていたが、11月8日の金曜日は、それまで使っていたレナード真空管やガイスラー真空管の代わりにヒットルフ真空管を使ってみた。
  • レントゲンは実験を邪魔されたくないこともあって部屋をカーテンで遮っており、外の光も入ってこない状態にしていた。実験器具のスイッチを入れて真空管のガラス壁が発光したが、邪魔な光があったため、黒い紙で覆い、光が出てこないようにしてからもう一度スイッチを入れた。しかし、淡い緑色の光が離れた机の上の蛍光板を照らしている。黒い紙に穴が空いていないかチェックしたが穴は空いていない。陰極線なら数センチの範囲しか照らさないため、「新しい放射線か?」と半信半疑に思いながら検証をしてみた。
  • この放射線は、ノートや木ぎれも通過できた。金属はどうだろうかと指で銅貨をつまんで真空管に近づけると、蛍光板の上にはまるい銅貨と、それを持っている自分の手の骨が映っていた。驚いたレントゲンは、それ以来毎日実験を繰り返し、徹底的に実験を検討した。そしてレントゲンは、この未知の放射線を未知数XになぞらえてX線と名付けた。


■ レントゲンの命名 ■
  • レントゲンは実験室に寝泊まりしながら実験を行い、鉛がX線を通しにくいことなど、さまざまな調査検証を行った。レントゲンは、X線が陰極線と違う新しい放射線であることを証明するために7週間かかった。
  • その年(1895)の12月28日、レントゲンはX線の写真を添えた研究報告を物理・医学協会に提出した。また、研究成果を各地の友人に送った。間もなく新聞にも取り上げられ、それは1896年1月6日までに全世界へ伝えられた。
  • X線発見の反響はすさまじいものであった。数日後の1月23日には、ビュルツブルグ大学で、X線発見の発表を行った。この席で、解剖学者のフォン・ケリカーはX線をレントゲン線と呼ぶことを提案した。すなわちレントゲンとは愛称のようなものであり、X線とレントゲン線は同じ意味である。


■ レントゲンと特許 ■
  • レントゲンがX線を発見したのは、折しも発明の時代であった。ある日、ドイツ最大の電気会社の社長がレントゲンに、X線に関する特許を取得したかどうかについて尋ねた。レントゲンは、特許は取得していないし、今後取得する予定もないと答えた。X線はもっと研究されなければならず、X線を研究しようとする人たちが自由に研究できるようにするためには特許をとるわけにはいかないというのが理由だった。


■ レントゲンの功績 ■
  • レントゲンの願い通り、X線は多くの人たちに開放され、研究されていった。しかし、発見当初から医学に貢献すると期待されていたものの、X線装置そのものが高価であったことが足枷となって、実用化までは時間がかかった。
  • フランスやアメリカに、肺結核の診断にX線写真を利用することを研究する医師達が表れ、やがて、肺結核診断にX線写真が不可欠な時代が訪れた。
  • 日本にもX線発見のニュースは伝えられ、当初、松岡範茂が骨折患者を撮影した。1935年には古賀良彦は間接撮影を開発し、集団検診を可能にした。
  • 今や医療にX線は必要不可欠になり、数え切れないほどの命が救われている。もし、レントゲンがあのとき特許を取得していたら、今ほどの性能を持っているとは考えられない。レントゲンの功績は、X線を発見したことと、特許を放棄することによってX線を広く開放したことだろう。
  • 1901年、第1回ノーベル物理学賞を受賞した。しかし、レントゲンは晩年、戦争や国の混乱,破滅的なインフレの中でさびしい余生を送ったそうである。
  • 個人的な意見になってしまうが、レントゲンが望んだ医療のための「X線撮影」を、レントゲンの功績を讃え、「レントゲン撮影」と呼ぶことについて大変喜ばしいことだと思う。願わくば、「デジトゲン」と改変せず、「レントゲン」の名称を残して欲しいと思う。