たかなっちの高校生物 > 理科実験の試み > ニワトリの手羽を用いた組織の観察
理科実験の試み
生物教員である作者による理科実験の実践や試みの紹介
Site Menu
トップページ
理科実験ページ


Page Menu
はじめに
用意するもの
方法
結果,成果
考察,コメント
参考,文献


Related Page
豚足の・・・の観察


ニワトリの手羽を用いた組織の観察

作業時間:約1時間 余裕を持ってやるためには2時間欲しいですね。



■ はじめに ■
  • 同じ形や働きの細胞が集まり、組織を形成します。
  • 組織は、上皮組織,筋組織,結合組織,神経組織に分けられます。
  • 実際に、スーパーなどで市販されているニワトリの手羽の、筋組織や結合組織を観察します。


■ 用意するもの ■
  1. ニワトリの手羽・・・スーパーなどで販売している手羽です。唐揚げ用でもなんでも構いません。
  2. 解剖セット・・・写真の通りです。
  3. 顕微鏡一式・・・顕微鏡は400倍くらいあればOKです。
  4. メチレンブルー溶液・・・観察しやすくするためです。


■ 方法 ■
  1. 組織の観察が目的ですが、折角ですので腱を確認しましょう。
    腱の役目からわかるように、両端は骨と筋肉です。
  2. [筋組織の観察]
    筋肉を観察します。
    顕微鏡の標本はできるだけ薄くするのが鉄則ですが、軟らかい肉を薄く切るのは無理なので、適当に小片をペトリ皿に乗せ、柄付き針でほぐします。
    次に顕微鏡で観察しやすくするため、メチレンブルー溶液を1滴加え、約3分染色します。
    それをスライドガラスに乗せ、カバーガラスをかけて観察します。経験的に、カバーガラスを軽く親指で押すと、標本が広がり薄くなります。
  3. [結合組織の観察]
    軟骨を観察します。
    関節部分の軟骨をできるだけ薄く切ります。



■ 結果 ■
  1. ニワトリの手羽の筋組織(15×4倍)
  2. ニワトリの手羽の筋組織(15×10倍)

  3. ニワトリの手羽の筋組織(15×40倍)

  4. ニワトリの手羽の結合組織[軟骨組織](15×4倍)

  5. ニワトリの手羽の結合組織[軟骨組織](15×10倍)

  6. ニワトリの手羽の結合組織[軟骨組織]
    生徒が作ったプレパラートです。(10×40倍)

  7. ニワトリの手羽の筋組織
    生徒が作ったプレパラートです。(15×10倍)

  8. ニワトリの手羽の結合組織(軟骨組織)
    生徒が作ったプレパラートです。これは染色していません。(15×40倍)
  9. ニワトリの手羽の結合組織[軟骨組織]
    生徒が作ったプレパラートです。(15×40倍)



■ コメント ■
  1. 自由選択科目で開講されている生物の授業で行いました。生徒の人数は20名程度です。正直言って顕微鏡を使う授業はあまり好きではありません(生物の先生がこんなことを言っていいのか!?)。生徒の「見えません」に対応していると手が足りなくて・・・。ただ、やはり教科書や資料集の写真を自分で作成したプレパラートで確認することは何者にも代え難いので、今回も積極的に取り組んでいます。

  2. さて、プレパラートの作成ですが、筋組織は簡単に作れます。もともと軟らかいので薄く切ることはできませんから、その代わり、カバーガラスの上から親指で軽く押すと標本が広がり薄くなります。

  3. 問題は軟骨です。ニワトコなどを使えば比較的楽に切れると思いますが、今回は使っていません。したがって経験がものを言います。ほとんどの生徒の標本が厚く、観察が困難でした。軟骨切片の端の方なら細胞が観察できる部分があるだろうと思っていましたが、それほどあまくはありませんでした。軟骨と言えども、やはり骨ですので硬く、カバーガラスを押してもつぶれません。

  4. 折角ですので、腱の観察も含めました。といっても肉眼ですが・・・。当然ですが、ニワトリの腱は豚などよりも細いです。

  5. 顕微鏡は400倍くらいまであれば十分です。


■ 参考 ■

  ▼「豚足の筋組織と結合組織の観察」のページと同文です。
  • 結合組織は基質,繊維,細胞の三部分からなり、体の各部をつなぎ合わせ、また支える役目を果たす組織で、広義には骨,軟骨,血液をさす。
  • 軟骨組織は結合組織の一種で、基質及びその中に含まれる繊維の性質から、ガラス軟骨,弾性軟骨,繊維性軟骨に分類できる。
  • ガラス軟骨は、肋軟骨,鼻骨,気管,軟骨魚類の骨格など。
  • 弾性軟骨は、耳殻,外耳道,喉頭軟骨など。
  • 繊維性軟骨は、椎間軟骨,恥骨縫合など。
  • 軟骨組織には毛細血管が分布せず、細胞への酸素や養分の供給は基質を通じて行われていると考えられている。
  • 脊椎動物の硬骨の断面は、中央に骨髄、その回りにハウシップ窩やハバース管系があり、骨外膜で覆われた構造である。
  • ハウシップ窩内には造骨細胞,破骨細胞があり、骨組織の形成と破壊が繰り返され、ハバース層と呼ばれる層状構造が形成される。
  • ハバース層の中央はハバース管で、ここは血管と神経の通路になっている。
  • 骨外膜には感覚神経が分布し、外傷などで痛みを感じる。
  • 血液の基質は血しょう、細胞は血球であり、繊維に当たるものはない。
  • 脊椎動物ではヘモグロビンを含み、赤色だが、無脊椎動物では特別なものを除き赤血球はない。
  • 無脊椎動物で血液が赤い場合は、ヘモグロビンが血しょうに溶けていることがおおい。
  • 軟体動物や節足動物の血液は、銅を含んだヘモシアニンを含み淡青色を呈する。(私見だが、スルメを火であぶったときに見られる緑の炎は、銅の炎色反応だと思う。余談だが、スルメの語源は「墨を吐くものの群れ」→「墨群(スミムレ)」で、かつては干したタコもスルメと呼ばれていた。)
  • ナマコ,ホヤなどの血液には、バナジウムのような稀有金属が含まれている。
  • 筋組織の細胞は、代謝によって得たエネルギーを力学的な仕事に変えることができ、原生動物のツリガネムシVorticellaやラッパムシStentorなどの特別な構造を持つ糸筋もある。
  • 脊椎動物では筋を、平滑筋,横紋筋,心筋の3種類に分ける。
  • 無脊椎動物ではこの区別が難しい。例えば軟体動物の中には1つの筋の中に平滑筋と横紋筋が混在していたり、近縁の種にもかかわらず相同の器官が一方は平滑筋で、他方は横紋筋で作られていることもある。
  • 脊椎動物では心筋を除いて横紋筋は随意筋で、平滑筋は不随意筋であるが、これも無脊椎動物ではあてはまらない。
  • 平滑筋は、内臓の筋層(食道,胃,腸,気管,気管支),脾臓の皮膜や小柱,真皮中で毛のうや汗腺に付着,動脈・静脈・リンパ管の壁に存在する。
  • 平滑筋細胞は普通長い紡錘形であるが、動脈などに付いているものはやや短く、ときに分岐したり、星形になったりする。長いものは500μm、小さいものは12μmだが、平均して約200μmであり、十分に光学顕微鏡で観察できる。
  • 平滑筋では、横紋筋ほど血管が分布していない。神経は交感,副交感神経がともに分布しているが、脊椎動物では運動神経は分布していない。(したがって不随意筋となる)
  • 平滑筋は、引き延ばす力に抵抗し、ヒトの平滑筋が平方cmあたり10kg、二枚貝の閉殻筋では15kgの荷重に耐える。
  • 横紋筋を構成する筋繊維(すなわち筋細胞)は、それぞれ結合組織の薄い層に取り巻かれており、神経や血管はこの結合組織を通って分布する。
  • 横紋筋に分布する主な神経は運動神経であり、ある筋繊維は特別に変形して筋紡錘と呼ばれる構造をつくり、ここには感覚神経が分布している。これが筋の収縮状態を知覚して中枢に伝えるセンサーの役割を担う。
  • 筋繊維は多核の巨大細胞で、長いものでは3~4cm、短いもので1mmの長さを持ち、断面の10~100μmほどである。
  • 脊椎動物の横紋筋繊維には、赤色のものと白色のものの2種類がある。1つの筋の中に両者が混じっていることもあるし、片方のみが大部分を占める筋もある。
  • 横紋筋について、白色を呈する筋は、赤色を呈する筋よりも速い収縮をするが疲労も速い。赤色の筋にはミトコンドリアが多く、白色の筋は解糖能力が高く、高エネルギーリン酸の蓄えも多い。解糖系は酸素の存在によって抑制されることから(これを発見者にちなんでパスツール効果という)、有酸素,無酸素条件が白色と赤色の筋の能力発揮に影響すると言われる。なお、赤く見えるのは細胞質中で酸素貯蔵の働きをするミオグロビンを多く含む繊維のためである。
  • 筋肉痛は乳酸の蓄積によって起こるが、乳酸は直接的な発痛作用を持たない。短時間の休憩で消失する痛みは、筋肉内にアデノシンなどの発痛物質が産生されたためと考えられている。
  • 加齢伴い、筋肉痛が遅れて現れるが、これはおそらく筋線維の傷害後に現れる炎症反応が若い人では早く、年をとるとその反応が鈍くなることが原因の一つと考えられている。筋肉組織からの逸脱酵素の一つであるクレアチンキナーゼ(CPK)が3,4日目にピークに達し、これが筋線維の傷害を反映すると考えられている。伸長性収縮(運動からしばらくたって現れる筋肉痛を引き起こす収縮運動のこと)の後で痛みが出た筋肉を調べると、Z膜が傷害されている。CPKの増加がピークを過ぎると、筋線維の壊死が認められ、白血球、マクロファージの浸潤があり、再生に3,4週間かかる。筋肉痛が年とともに遅れるのは、おそらく筋線維の傷害後に現れる炎症反応が若い人では早く、年をとるとその反応が鈍くなることが原因の一つと考えられている。
  • 筋肉痛を軽減する方法として、ビタミンE、ビタミンC、尿酸およびスーパーオキシド・ジスムターゼは活性酸素による傷害を予防する。スーパーオキシド・ジスムターゼはセレンを含み、ビタミンEとセレンは活性酸素による筋線維の傷害を防止する。しかし、ビタミンEは運動によるヒトの筋傷害を予防できない。ビタミンCは運動による遅発性筋肉痛を予防する(Kaminski & Boal 1992)。
  • トレーニングなどによって筋繊維は肥大するが、無限に肥大するわけではなさそうである。さまざまなスポーツ選手を対象とした測定から、ヒトの筋量の上限は身長1m当たりにして男子が70kg、女子が50kg程度と予想されている。一般男子の筋量は平均で54kgで、身長1m当たりでは約30 kg/mとなる。
  • トレーニングなどによって筋線維数が増加するかどうか?について、増加する可能性はあるが結論までには至っていない。ヒトではトレーニングによって筋線維は肥大するが増殖はしないという報告が多いが、増殖の可能性を指摘した報告もある。
  • 脊椎動物の心筋は特殊な横紋筋であって、自律的に律動運動をする不随意筋である。厳密に横紋筋とは言えず、平滑筋や横紋筋とともに心筋(心臓筋)と分類している。