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顕微鏡写真(菌類)
生物教員である作者が撮影した顕微鏡写真の紹介
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アオカビ↓
エノキダケ↓
クロカビ↓
ケカビ↓
コウジカビ↓
サビキン↓
シイタケ↓
マツタケ↓


顕微鏡写真(菌類)

■ 菌類とは? ■
  • 菌類」とは、次の条件を満たす微生物をいいます。

    1)核がある。
    2)光合成をしない。
    3)有性または無性的に繁殖する。

  • 多くの場合、菌糸を伸ばし、胞子を作って繁殖します。光合成ができない(光を作って有機物を作れない)ので、枯れ木などに住み着いて、それらから栄養を摂取します。
  • 地球上の菌類の種類はウイルスや細菌などよりも圧倒的に多く、現在5,100属45,000種余りが知られています。しかし、推定では150万種ほど存在するのではないかと考えられています。
  • これら菌類には、キノコやカビ類が含まれていますが、胞子を包む子実体が大きいものをキノコ子実体より菌糸が目につきやすい仲間をカビといっています。したがって、キノコやカビは俗称であり、分類学的な正式の名称ではありません。
  • 菌類は、体がアメーバ状を呈し、粘菌類とも呼ばれる変形菌類と、菌体が通常菌糸状である真菌類の二つに大別されます。



    ①胞子が飛散し、地面に落ちる。水分や栄養分を吸収しながら菌糸が生長します。
    ②菌糸が生長します。
    ③胞子嚢を持つ菌糸体が上に向かって伸びます。
    ④さらに生長します。
    ⑤やがて胞子をつけます。この胞子の色が普段私たちが目にしているカビの色になります。
  • キノコの場合、上に伸びる菌糸体が傘のような子実体となりますが、基本的に生活環は同様です。また、例えば有性生殖するカビがあるなど、これに当てはまらない仲間も存在します。
  • 無性生殖(分裂など)←→有性生殖(精子や卵細胞などの配偶子の受精などによる生殖方法)


アオカビPenicillium
  • [特徴]
     アオカビは最も普遍的に見られる不完全菌の一つで、比較的乾いた場所にも生育するカビです。胞子の色が肉眼で青みを帯びた水色であることからその名が付いています。ただし、白や緑がかった色のものも見られ、必ずしもすべてのアオカビ属のカビが青いわけではありません。 顕微鏡で観察すると、筆状体(ひつじょうたい、penicillus)と呼ばれる筆のような形の構造が見られます。これがこのカビの学名の由来になっています。医学的には、病原菌としてよりむしろペニシリンの発見での名が高いでしょう。アオカビ(ペニシリウム)が産生するペニシリンは、アレクサンダー・フレミングが1928年に発見した世界初の抗生物質です。一説には、他の細菌を培養するための培地にたまたまアオカビ(P, notatum)が混入した際、そのアオカビのコロニー周辺に細菌が生育しない領域(阻止円)が出来ることを見つけたことがその発見につながったと言われています。また、ゴルゴンゾーラ、ロックフォールなどの代表的なチーズの製造に用いられるカビもアオカビの仲間です。有害なアオカビの仲間もいますが、我々の生活に恩恵を与えてくれる面も多いカビです。

  • [分類]
    菌界 Fungi
    子嚢菌門 Ascomycota
    不整子のう菌綱 Plectomycetes
    ユーロチウム目 Eurotiales
    トリコミセス科 Trichomaceae
    ペニシリウム属 Penicillium

    写真1 15×10 写真2 15×40


エノキダケFlammulina velutipes(Curt.:Fr.)Sing.
  • [特徴]
     エノキタケ(榎茸)はキシメジ科のきのこの一種です。子実体は古くから食用とされ、エノキダケ、ナメタケ、ナメススキ、ユキノシタとも呼ばれています。広葉樹の枯れ木や切り株に寄生する木材腐朽菌で、子実体の発生時期は気温の低い季節であり、晩秋から初春にかけて、雪の中からさえも発生します。現在、工場におけるびん栽培によって1年中出回るきのこですが、野生のエノキタケと非常に異なる姿のもやし状態に育てたものが一般に出回ります。そのため、野生、あるいはほだ木栽培のエノキタケと、びん栽培のエノキタケでは味覚も極端に異なります。菌類は光がいらないと思われがちです。光合成は行なわなくて、生活に不必要ですが、多くの菌類は、子実体や胞子形成において、光の影響を受けます。光のあるところに出て胞子を作る方が、胞子を広く飛ばせる可能性が高いので、光を求める性質をもっています。したがって、光のない場所で子実体形成を行なわせれば、光を求め、細長く、頼りない姿になります。光のある場所では、柄が短く、しっかりした傘をもつ、濃い色のキノコの姿になります。

  • [分類]
    界 : 菌界 Fungi
    門 : 担子菌門 Basidiomycota
    綱 : 菌じん綱 Hymenomycetes
    目 : ハラタケ目 Agaricales
    科 : キシメジ科 Tricholomataceae
    属 : エノキタケ属 Flammulina P.Karst.
    種 : エノキタケ F. velutipes(Curt.:Fr.)Sing.

    写真1 15×10(サフラニン,ファーストグリーンの二重染色) 写真2 15×40


クロカビCladosporium
  • [特徴]
     クラドスポリウムはクロカビと呼ばれるカビの1種です。固形培地上の集落はビロード状で、暗緑色から黒緑色を呈し、菌糸は隔壁を有します。俗にクロカビといいますが、クラドスポリウムの和名はクロカワカビです。住宅の内外に黒色の汚染物を認めたら、それはほとんどクラドスポリウムと考えてよいでしょう。このうちアルテナリア、クラドスポリウムは家庭内で湿度の高くなる浴室、洗面所、台所、冷蔵庫などに繁殖する黒色の好湿カビです。ちなみに、コウジカビやアオカビなどは居間や寝室の室内の塵に多く含まれている好乾カビで、室内に浮遊するため、人体への影響が大きいものがあるとされています。

  • [分類]
    菌界 Fungi
    不完全菌門 Deuteromycotina
    不完全糸状菌綱 Hyphomycetes
    クラドスポリウム属 Cladosporium

    写真1 15×10 写真2 15×40


ケカビMucor
  • [特徴]
     特に湿気の多い有機物上に出現する普通のカビです。約50種が知られ、世界中の土壌や落葉落枝層に広く分布していますが、比較的冷涼な地域で多くみられるようです。糖分を含んだ栄養豊かな寒天培地に土壌をのせた場合、あるいは動物の糞(ふん)などを湿潤状態にたもった場合、すぐにたちあがってくる白や灰色の糸状の菌糸の多くはケカビの胞子嚢(のう)柄で、肉眼で存在をたしかめることができます。その柄の先端にやがて黒や茶色系の点状のものが生じますが、それが胞子嚢で、中に多数の胞子が作られます。近縁のクモノスカビ同様、米飯やパンなどといったデンプン質の食品にもよく発生しますが、ケカビは陸上植物が大量につくる高分子の炭水化物であるセルロースやリグニンを分解して利用することができず、もっぱら低分子の糖に依存しているようです。

  • [分類]
    界: 菌界 Fungi
    門: 接合菌門 Zygomycota
    綱: 接合菌綱 Zygomycetes
    目: ケカビ目 Mucorales
    科: ケカビ科 Mucoraceae
    科: ケカビ属 Mucor

    写真1 15×10 写真2 15×40


コウジカビAspergillus
  • [特徴]
     コウジカビは、日本では身近なところにごく普通に見られる不完全菌の一つです。アオカビと同様、比較的乾いた場所でも生育するカビで、放置されたパンや餅などの上によく姿を見せます。コウジカビを米、米ぬか、麦、大豆などに生やして継代培養したものを麹(こうじ)と呼びます。コウジカビはデンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する性質が強く、また種によっては効果的に脂肪を分解吸収するので、味噌や醤油、日本酒などの日本の食文化には欠かせない数多くの発酵食品に利用されてきました。一方で、コウジカビの仲間にはヒトに感染して病気を起こすものや、食品に生えたときにマイコトキシン(カビ毒)を産生するものがあり、医学上も重要視されているカビの一種です。空中から基質上に胞子が落ちると、胞子は発芽して、菌糸は基質に伸びて、コロニーを形成します。コロニーはすぐに分生子形成による無性生殖を始めます。
     コウジカビの一種であるニホンコウジカビ(A.oryzae)は、デンプンをブドウ糖に分解したり、タンパク質をアミノ酸に分解する性質が強く、酒、味噌、醤油、鰹節や味噌、醤油の製造に利用されています。また、アワモリコウジカビ(A. awamori Nakazawa)の胞子は黒く、これで作られた麹を黒麹といいますが、これはデンプンをブドウ糖に分解するだけではなく、クエン酸を作り出す性質が強いので、クエン酸がもろみが雑菌によって腐敗するのを防ぐ性質を利用して気温の高いところでの醸造を可能にします。泡盛や焼酎の製造に使われることで有名です。

  • [分類]
    菌界 Fungi
    子嚢菌門 Ascomycota
    不整子のう菌綱 Plectomycetes
    ユーロチウム目 Eurotiales
    麹菌科 Aspergillaceae
    アスペルギルス属 Aspergillus


    写真1 15×10 写真2 15×10
    写真3 15×40 写真4 15×40


サビキン
  • [特徴]
    サビキンは、種子植物の茎や葉に朱色や赤さび色の胞子をつくる寄生菌の総称です。サビ菌の中には虫こぶをつくるもの、とくに針葉樹に寄生するものの中にはテングス病(天狗巣病)とよばれる何本もの分枝が密集して生える病気をひきおこすものがあります。サビ菌は植物をからすことはあまりありませんが、植物が大きくなるのを妨げたり、変色させたり、生長を妨げたりします。サビ菌によって引き起こされる植物病をサビ病と呼びます。

  • [分類]
    界 Fungi
    担子菌門 Basidiomycota (basidiomycetes )
    サビキン綱 Urediniomycetes
    サビキン目 Uredinales

    写真1 15×10 写真2 15×40


シイタケLentinula edodes
  • [特徴]
    シイタケ(椎茸)は、キシメジ科シイタケ属の食用キノコです。かつてはマツオウジ属lentinusに入れられていましたが、遺伝子レベルの研究結果から現在の学名となっています。日本と中国で食用に利用されるほか、東南アジアの高山帯に分布します。日本では食卓に上る機会も多く、最もポピュラーなキノコの一つでしょう。クヌギやシイ、ナラ、クリなどの枯れ木に生えます。かさの表面は茶褐色で綿毛状の鱗片があり、裏面は白色です。食用で美味。旨み成分として、5'-グアニル酸やグルタミン酸を含みます。江戸時代から、原木に傷を付けるなどの半栽培が行われてきましたが、最近では人工栽培されたものが多くなっています。また、これまでは原木栽培が中心でしたが、最近ではおが屑などによる菌床栽培が広まり、それに伴って味も変化しているようです。ちなみに、干し椎茸(ほししいたけ)は、椎茸を乾燥させ保存性を向上させた食品ですが、生のものよりも味や香り、旨みが増すため、出汁をとったり、水で戻してから煮物などに利用されます。

  • [分類]
    界: 菌界 Fungi
    門: 担子菌門 Basidiomycota
    綱: 菌じん綱 Hymenomycetes
    目: ハラタケ目 Agaricales
    科: キシメジ科 Tricholomataceae
    属: シイタケ属 Lentinula
    種: シイタケ edodes

    写真1 15×10 シイタケの胞子 写真2 15×40 シイタケの胞子


マツタケT.matsutake
  • [特徴]
    現在のところ栽培することができず、自然に生えているものを秋に収穫します。過去には日本でも多く取れましたが、マツクイムシにより松林が被害にあったこと、また、乱獲と山林の開発、そして松の葉や枝を燃料として利用しなくなり松林が荒れたことにより収穫量が少なくなったと言われています。そのため、高価で取引されます。最近では韓国や北朝鮮、チベットからの安い輸入物が多くなりましたが、日本産に比べると風味が落ちるようですが、これは輸送中の時間の経過によって起きる事であり、新鮮であれば輸入物も国産も何ら変わりはないようです。輸送技術が発達すれば状況も変わるでしょう。

  • [分類]
    界 : 菌界 Fungi
    門 : 担子菌門 Basidiomycota
    綱 : 菌じん綱 Hymenomycetes
    目 : ハラタケ目 Agaricales
    科 : キシメジ科 Tricholomataceae
    属 : キシメジ属 Tricholoma(Fr.)Quel.
    亜属 : キシメジ亜属 Tricholoma
    節 : マツタケ節 Genuina
    種 : マツタケ T. matsutake

    写真1 15×10 写真2 15×40
    写真3 15×10 胞子 写真4 15×40 胞子