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理科実験の試み
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統計学のススメ!


カニの足・食べるなら何番目?[統計学の練習]

作業時間:約1時間 どこからどこまでが作業時間に入るのか曖昧ですが・・・



■ はじめに ■
  • みなさんはカニを食べるとき、どの足を選びますか?
    当然、身が多くて、おいしい足が良いですよね?
    貧乏性の私は、ふと疑問になったので実際に調べてみました!
    小学生の課題研究みたい(~_~;)
  • この実験の一番の目的は、「統計学の練習」ということです。
    アンケートによる数字という結果は、絶対的な意味はよりも相対的な意味が重要で、それ相応の統計処理が必要です。
    その方法を紹介しようと思います。

  • この内容が「gooビジネスEX」の「注目ワードピックアップ カニはどの脚が一番おいしいの? 2009年12月22日」に掲載されました(→こちら)。


■ 用意するもの ■
  1. ケガニ・・・今回は統計処理の練習ですので、他のカニでも構いません。ケガニは食べるというよりもだしをとるという目的の方が多いでしょうか。
  2. 電卓・・・関数電卓を使いこなせる人ならば関数電卓の方が圧倒的に有利です。


■ 方法 ■
  1. それぞれの脚を同じ茹で方で茹でます。そして、5人のパネラー(食べ比べをする人たち)においしいと思った順に番号をつけてもらいます。(「1」が最もおいしい)
    もちろんパネラーにはどの脚が第何脚かということは教えていません。
    ただし、第1脚は身の形状でわかってしまうので、第1脚は比較対象外です。
    したがって、第2脚~第5脚の比較になります。
  2. パネラーの結果について、統計処理を行います。
    おいしさを順位で判断しているのでノンパラメトリック法という方法で処理します。
    (大学のときの知識が曖昧になってきているので間違っていたらごめんなさい。)
    統計分析の手順及び結果は次の通りです。
  3. Bartlett検定 → 一元分散分析 → Tukey多重比較分析
    今回はこのような手順で処理しました。ただし、それぞれの検定の結果によって用いる統計手法が異なります。今回のデータの場合にはたまたまこのような統計手法が必要になったというだけです。
  4. 参考までに、それぞれの重量も測定します。


■ 結果 ■
  1. パネラーの平均値。数字の小さい方が、より美味しいと判断したことを示します。
    • 第2脚・・・3.2
    • 第3脚・・・1.2
    • 第4脚・・・2.2
    • 第5脚・・・3.4
      第3脚が一番おいしいという数字になっていますが、本当にそう言い切ってよいかどうかを次の統計処理によって判断します。
  2. 検定結果
    1. Bartlett検定・・・等分散
    2. 一元分散分析・・・1%水準で有意差あり
    3. Tukey多重比較分析・・・第3脚と第2脚に1%水準で有意差あり,第3脚と第5脚に1%水準で有意差あり
  3. 重量
    平均
    第1脚 16.6g 15.4g 第1脚 ・・・ 16.0g
    第2脚 18.6g 17.6g 第2脚 ・・・ 18.1g
    第3脚 17.1g 17.1g 第3脚 ・・・ 17.1g
    第4脚 14.0g 14.3g 第4脚 ・・・ 14.2g
    第5脚 11.6g 13.0g 第5脚 ・・・ 12.3g


■ コメント ■
  1. 統計結果から、今回の実験で『第3脚は、第2脚と第5脚よりもおいしい』といえるという結果になりました。
    次においしいとされたのは第4脚ですが、統計結果からは『他と比べておいしいとは言い切れない』ということになりました。
  2. 一応パネラーには、(一般人よりも舌がこえているであろう)家庭科の先生2名が含まれています。
    ほとんどの人が第3脚がおいしいと言っているし、統計処理でもそうでているので間違いないでしょう。
  3. この実験を始める前にある先生が、「カニが歩くとき、第3脚が一番運動量が多いからそこがおいしいんだ」とおっしゃってました。
    「うそ~!?」と半信半疑でしたが、結果はその通りでした。
    恐るべし!年輩者の雑学!!
  4. ちなみに、はさみの部分はどうかというと、特においしいわけでもなく、まずい方でもないという感じでした。
    今回材料に使ったのはケガニでしたが、これからカニが食卓にでてきたときは迷わず第3脚を選ぼうと思います。
    量も多いし、うまいんだからっ!(2002.6 記)


■ 参考 ■
  • ケガニは甲長,甲幅とも10cmを越える。水深30~60mの砂泥底に多く、通常昼間に活動し、摂餌活動を行なう。ケガニの交尾期は夏から冬で釧路沖では8月から翌年の1月の間で、北海道では産卵盛期10~11月である。卵は黄橙色で直径0.8~0.9mmで、産出されるときに雌の体内に保管されていた精子によって受精した卵は、雌の腹部内の内肢に付着して卵塊となる。産卵数は甲長60mm前後の固体で4万~6万粒である。。ケガニは肉食性で、成体はヨコエビ類やエビ類などの小型甲殻類、多毛類を食べる。