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理科実験の試み
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水めがね ~レンズのしくみを理解しよう~

製作時間:約1時間 ただし、接着剤の乾燥時間は含みません。



■ はじめに ■
  • 『水めがね』とは水をレンズにして作った眼鏡のことです。しかし、本当にこんな呼び方をするかどうかはわかりません。
  • 以前、『近視や遠視のために不自由な思いをしているアフリカの子供たちが多い』というのをテレビ番組で見ました。しかし、現地では眼鏡は高価なもので、広く普及しているわけではありません。そこで、ある日本人がレンズの変わりに水か何かを利用して眼鏡のレンズをつくり、眼鏡を子供たちに提供していました。それは、我々日本人が一般に利用している眼鏡の質よりは劣りますが安価です。そのような眼鏡をかけて喜ぶ子供たちの姿は今もはっきり憶えています。
  • 原理が明快で簡単に作れること、また、このような発明品が多くの人に役立っていることなど、水めがねには何とも言い難い魅力を感じました。
  • そこで、このような発明品を是非生徒にも紹介したいと思い、教材として作成してみました。



■ 用意するもの ■
  1. 厚さ7mmくらいのゴム板・・・ホームセンターで購入しました。
  2. シリコンチューブ・・・ホームセンターで購入しました。10cmぐらいの単位で販売していました。
  3. クリップ・・・しっかり留められればどのようなクリップでも構いません。
  4. 10ml容のシリンジ・・・特に注意点はありません。


■ 方法 ■
  1. 準備した材料を写真のように組み立てます。
    水が漏れないようにゴム板を重ねるなどして頑丈に作った方が良いのかも知れませんが、教材として利用することもあり、できるだけ単純に作りました。
    だから接着剤をたっぷり・・・、付けすぎて汚くなってしまった。
    ちなみに円形に切り抜くためにドリルを利用しました。
    ドリルの先に特別な刃(普通に販売しています)を付けると、力が少々必要ですが、きれいに切り抜けます。



■ 結果 ■
  1. シリンジ(注射器)の水を注入して凸レンズにした状態

  2. 凹レンズの状態

  3. 凸レンズになっているので虫眼鏡と一緒。
    光も集められます。

  4. めがねも作ってみました。
    ただ、レンズ面が多少歪んでいるので、ちょっとクラクラきます。



■ コメント ■
  1. 水めがねを製品として完成させるならばもっと頑丈な作り方をしなければなりません。しかし、今回はあくまでも目に関する授業の一環で行うものです。そのため、なるべくシンプルに仕上げました。当然ながら、もろいです。ちょっと無理をすると水が漏れたりします。
  2. 水の屈折率は0.33とガラスよりも低いため、市販されているレンズのようにはいきません。また、水めがねのレンズの表面がビニールシートなので、変なふうにゆがんだりしますが、生徒は大変興味を持ってくれていました。


■ 参考 ■
  • 外界からの光は、涙,角膜,前眼房,水晶体,硝子体を通り網膜上に結像するが、眼球各部での光の屈折はそれぞれ異なり、複雑な光学系を形成している。しかし、これら複雑な部位の距離などを総合して考えると単純な光学系として捉えることができる。これをDondersの省略眼という。眼の結像を理解するときに、よく高校の教科書などに登場する。省略眼は、角膜の前面を曲率半径5mmの完全な球面と仮定し、結節点から15mm後方に網膜を設定している。
  • 水晶体の曲率の調節は毛様筋の収縮,弛緩により行われている。近い物体を見るときには毛様筋を収縮(動眼神経:副交感神経緊張)させる。これにより毛様体の両端が接近し、チン小帯が弛緩し、水晶体が膨隆化する。このため屈折率は大きくなり、焦点距離が短くなる。
  • 遠近調節の努力をしないでも明瞭に見える遠い点を遠点といい、正常視では無限遠である。一方、最大の遠近調節を行って明瞭に見える最も近い距離を近点という。近点までの距離は8歳児で約8.6cm,20歳で10.0cm,60歳で83.3cmとなり、加齢とともに増大する。これは水晶体を構成する物質が硬化するためで、これが老視の原因となっている。
  • 爬虫類,鳥類,哺乳類ではレンズの曲率の変化、頭足類,魚類,両生類ではレンズと網膜間の距離の変化によって結像の調節を行う。
  • 正常視では、無限遠の物体の像が無調節時に網膜上に結像する。しかし、眼軸が長すぎたり、角膜や水晶体の曲率が大きすぎると網膜の前方に結像する。これを近視という。原因によって軸性近視,屈折性近視と区別できる。逆に網膜の後方に結像するのを遠視という。
  • 正常視でも角膜の曲率は方向により多少異なり、垂直方向で最大であり水平方向で最小を示す。この曲率の差が生理的範囲を超えたものを正乱視という。一方、角膜表面が部分的に歪みを有する場合には各部で屈折率の異なる不正乱視となる。
  • 眼の分解能を表すのが視力である。視力は国際試視力表の「C」の記号(これをランドルト環という)を用いる。ランドルト環を用いた視力検査は、フランス人の医師Edmund Landoltによって考案された。ランドルト環は、直径:円弧の幅(線の太さ):輪の開いている幅(切れ目)=5:1:1で、太さ1.5mm、外直径7.5mmのリングに1.5mmの切れ目がある。この切れ目を5m離れた位置から観察すると、必然的に切れ目の2点間の角度(視角)が1/60°となる。これを分単位(1°を60分とする)で表すと1/60°は1分となる。視力は1/視角(視角は分単位で表示)で表すため、視角が1分の場合の視力は1/1分、すなわち1.0となる。例えば5m離れた位置から先ほどのランドルト環の切れ目がわからず、2.5mの位置まで近寄ったとすると、視角は計算上2分となり、1/2分、すなわち視力は0.5となる。また、10mの位置でも切れ目が確認できるとすれば視角は0.5分となり、視力は1/0.5分で2.0となる。しかし、実際にはこのような長い距離を確保するのが難しく、大きさの異なるランドルト環を用意し、簡易的に視力を測定することが多い。なお、視力は明るさの影響も受けるので照度は200ルクスで行うことを条件としている。
  • 補足すると、厳密にはランドルト環までの距離が2倍になっても単純に視覚が1/2になるわけではない。しかし、視覚が著しく小さくなる場合には、距離が2倍になると視覚は極めて1/2に近似するようになる。