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理科実験の試み
生物教員である作者による理科実験の実践や試みの紹介
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背景と目的
用意するもの
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結果
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デジカメ・・・比色法


洗剤に含まれるタンパク質分解酵素の活性実験

作業時間:約30分 洗剤から酵素を取り出すのに時間がかかります。



■ 背景と目的 ■
  • 高校の設備でタンパク質などの濃度を求めること(定量)は困難です。定量ができないがために踏み込んだ実験ができないことがよくあります。また、生徒の発展的な考察が期待できないなどの問題点も生じます。
  • そこで、特別な機材を使わずにできる定量法を考え、レンズの汚れを落とすタンパク質分解酵素の活性実験を行いました。それは「デジカメ簡易比色法を利用したプロテアーゼ活性の測定」のページに紹介した通りですが、ついでに他の素材でもやってみようかと思い、この実験を試してみました。
  • 酵素として、洗剤「アタック」に含まれているタンパク質分解酵素を利用し、基質はスキムミルクです。
  • ただし、生徒実験として使える可能性を試すだけで、分解量の定量までは行っていません。あしからず。


■ 用意するもの ■
  1. 酵素・・・洗剤「アタック」

  2. 基質(酵素が反応する相手のこと)・・・市販のスキムミルク。1.0%に調製。
  3. 試験管・・・試験管はきれいなもの。傷が付いていたりするとNG。
  4. 試験管立て,黒い画用紙,目薬のような容器・・・黒い画用紙はデジカメで撮影をするときのバックにする。目薬のような容器とは、酵素の希釈液を入れるもの。
  5. 乳鉢・・・酵素が球状に包まれているため。

  6. ストップウォッチ・・・酵素の反応時間を測定します。
  7. ウォーターバス・・・異なる温度で活性を測定したいので、発泡スチロールの容器でも可能。


■ 方法 ■
  1. はじめに酵素溶液を作ります。
    洗剤に入っている青緑色の粒だけを集めます。地味な作業です。

  2. 次に、取り出した酵素の粒を乳鉢で磨り潰します。

  3. 酵素の粉末に蒸留水を加えて酵素液が完成です。濃度は33%くらいです。酵素粉末の量が少ないので電子天秤の上で計量をしながら水を加えていきました。そのため、33%にしようとしたわけではなく、計算すると結果的に33%程度になったというわけです。何回か予備実験をしましたが、これくらいの濃度が反応が見やすいです。

  4. 試験管を7本用意します。1本は蒸留水のみ,それ以外の6本にはスキムミルク水溶液を入れておきます。
  5. それぞれのスキムミルク水溶液に酵素を1分おきに添加します。

  6. 1本目の試験管に酵素を添加してから6分経つ頃に、試験管を一列に並べ、黒い画用紙を後ろに添えて写真を撮ります。
  7. 同じ酵素液を用いて、さらにこの作業を異なる温度条件で行います。


■ 結果 ■
  1. 37℃での1分ごとの反応の様子です。


  2. 56℃での1分ごとの反応の様子です。



■ 考察 ■
  1. なぜ37℃と56℃で実験したかというと、たまたまウォーターバスがこの設定にしかできなかったためです。それ以外に理由はありません。
  2. 結果については、56℃の方が反応速度が高いようです。この実験は単なる検証だったので定量は行ってません。
  3. 酵素に含まれるタンパク質分解酵素でもプロテアーゼ活性の測定に使えるということがわかりました。また、この実験だけでは最適温度はわかりませんが、70℃で反応させてみるとさらに分解が速かったです。コンタクトレンズのタンパク質分解酵素同様、最適温度が高いことが予想されます。
  4. 洗濯機のお湯はお風呂の残り湯が節約にもなるので良いといわれますが、できればもっと高温の方が汚れ落ちが良いということですね。例えば翌日の朝に洗濯をするのなら風呂上がり直後の熱いお湯ということ。ただし、いくら70℃の方が酵素反応が良いからといっても洗剤や服や洗濯機に与える熱の影響はわかりません。ご注意を。
  5. この実験によって洗剤中のタンパク質分解酵素でも生徒実験に使えますが、コンタクトレンズのタンパク質分解酵素の方が何かと楽ですね。サンプル処理などを考えると・・・。しかし、洗剤の酵素の活性を詳しく調査して「日々の洗濯を科学する」という主旨で実験を組み立てると、生徒はいくらか興味深く取り組めるかも知れません。